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2005年 03月 30日
ウンベルト・エコの『論文作法』(而立書房)は、論文作法書の紹介などでよく見かけるのだけど、確かにいい本だと思うのだけど、ちょっとわかりづらい。隔靴掻痒の感がある(難しい言葉を使ってみた)。訳文の問題だとずっと思っていたのだけどそれよりもやはり内容が難しいのだと気がついた。
エコは京大型カードよりも大きめのカードを使っているようだ。例にあがっているエコ自身のカードを見ても、あれだけの内容をとてもB6には入れられないことがわかる(156‐166)。カードに書く内容は、さまざま。おおざっぱに5つに分けられている(145)。 イ) 本または論文の読書カード ロ) 主題別カード ハ) 著者別カード 二) 引用のカード ホ) 作業カード イ)はいわゆる読書カード。有名な著者でない場合は著者に関するデータを書き入れる、書物または論文の概要を書いておく、引用した部分の前、後、または途中に自分の意見を入れるようにする、アウトラインと関係づけるようにする、など注意点があげられている(154)。 ロ)とハ)のカードはちょっと変わっている。「主題別カード」については、 たとえば、観念史の論文にとっては極めて好都合なものである。北米のSF小説における可能な世界について、君が作業を進める際、いろいろな作家が宇宙論的な雑多な問題に取り組んだいろいろのやり方を列挙していくとすれば、主題別の目録カードが理想的なものとなってくるだろう。(143)とある。観念の歴史をテーマにしたら、観念ごとのカードをつくるということだ(もっとも、作家ごとに別々に作るのだろうけど)。ここで重要なのは、論文がどういう性質のものかによって、作るカードのタイプが決まってくるということだ。これは他の論文作法書にはなかった指摘かもしれない。カードはやみくもに取るのではなくで、自分の論文の性質を考えて取り方を適切なものにしなくてはならないということ。 ハ)の「著者別カード」については次のように書いてある。 メダル方式[作家の生涯を簡潔に素描するやり方]で組み立てようと君が決意したものとする。つまり、テーマに関する序章、ついで、主要作家たち(シェクリー、ハインライン、アシモフ、ブラウン、等)のそれぞれに関する章、または端的に、モデル的小説に充当した一連の章、という方式である。この場合には、主題別の目録カードよりはむしろ、著者別の目録カードがふさわしい。シェクリーに当てたカードには、彼の本において可能な世界について語られている個所を見つけるのに必要なすべての参照事項を記入しておく。そしておそらく、そのカードは、“時間的ひだ”、“平行性”、“矛盾性”、等に下位区分されていることであろう。(143‐144)ここでも重要なのは、最初にどのようなタイプの論文を書こうとするか決めて初めてカードのタイプも決まるという点だ。全体の構成あるいはアウトラインが、カードの取り方を決める要因になるということだろう。 もちろん論文のパターンにはいろいろあるのだろうけれど、上のふたつのタイプのカードのうち、どちらが自分の論文にあてはまるか、一度は考えてみる必要があると思う。 二)の「引用のカード」は普通のカードと同じと考えられるのでそれはとばして、最後に重要なのが、へ)の「作業カード」。 これには種々なタイプのものが可能だ。アイデアと計画区分とを結びつけるカード、問題設定のカード(しかじかの問題にどう取り組むべきか?)、ヒントのカード(他人から得たアイデア、ありうべき展開のヒントを収録しておく)、等々。(144)まあ何でもありなのだろうけれど、「思いついたことを何でも書いておく」というような、よくあるアドバイス(と呼べないようなアドバイス)よりも具体的でずっとわかりやすい。
by wayakutaro
| 2005-03-30 04:00
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